『海月姫』『東京タラレバ娘』など、数々の大ヒット作を生み出し続ける人気漫画家・東村アキコさん。彼女は一体どのような道のりを経て、現在の地位を築き上げたのでしょうか?
この記事では、東村アキコさんの若い頃にスポットを当て、その才能の原点や、知られざる半生に迫ります。彼女の作品をより深く楽しむためのヒントが見つかるかもしれません。
東村アキコの出身と幼少期:才能の萌芽
東村アキコさんは、1975年10月15日、宮崎県串間市に生まれました。
宮崎県立宮崎西高等学校時代は美術部に所属し、部長を務めるほど、絵を描くことに情熱を注いでいた東村さん。高校生の頃から既に、その才能の片鱗が見えていたのかもしれませんね。
幼少期の東村さんについては、彼女自身が描いたエッセイ**『もしもし、アッコちゃん?~漫画と電話とチキン南蛮~』**に詳しく綴られています。驚くべきことに、短期間しか通っていなかった学校のことも鮮明に記憶しているそうです。
「子どものころや若いころのできごとを細かく覚えているので、時々思い出しては一人で爆笑しています。今となっては失敗談でも笑い飛ばせてしまえます」
と語る東村さん。この記憶力の良さは漫画家の特徴なのだとか。
「漫画家同士で思い出を語ると、みなさん描写が細かいんですよ」
と明かしています。この鋭い観察眼と記憶力が、後の作品作りに活かされているのですね。
美大時代と漫画家への第一歩:恩師との出会い
高校卒業後、東村さんは金沢美術工芸大学の美術科油絵専攻に進学します。美大時代の彼女はどんな学生だったのでしょうか?
実は、この時期の様子は彼女の自伝的作品『かくかくしかじか』に詳しく描かれています。
『かくかくしかじか』とは?
少女漫画家を目指していた高校生の「林明子」(東村さん自身がモデル)が、強烈な個性の持ち主である絵画教室の先生「日高健三」との出会いを通じて成長していく物語です。
この作品は東村さんの半生を描いたもので、2015年にはマンガ大賞と文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞をダブル受賞するほどの高い評価を受けました。
『かくかくしかじか』のインタビューで東村さんは、恩師である日高先生についてこう語っています。
「先生が亡くなってから7年くらいは経っていたと思うんですが、それまでずっと先生のことを考えないように、思い出さないようにして生きてたんです」
しかし、漫画家のはるな檸檬さんに「日高先生のこと、描かないんですか?」と言われたことがきっかけで、封印していた記憶と向き合うことになったそうです。この経験が、多くの読者の心を打つ名作を生み出す力となったのでしょう。
大学卒業後、東村さんは父親に仕事を決められそうになりますが、それを断り、父の勤める会社で働きながら漫画の創作活動を始めます。そして1999年、『ぶ〜けデラックス』NEW YEAR増刊にて『フルーツこうもり』でついに漫画家デビューを果たしました。
デビュー作から人気漫画家への道のり:ギャグの才能開花!
デビュー当初の東村さんは、シリアスな作風で描いていました。しかし、『Cookie』2000年8月号に掲載された読切作品『きせかえサマー』をもとにした初連載『きせかえユカちゃん』を通じて、徐々にコメディ色を強めていきます。
この作品で、東村さんはギャグ漫画家としての才能を開花させました!
『きせかえユカちゃん』のおまけマンガで紹介した実父のエピソードが後の担当編集者の目に留まり、2006年には『モーニング』で『ひまわりっ 〜健一レジェンド〜』の連載をスタート。この作品で、東村さんはギャグ漫画家として注目を集めるようになります。
そして2007年、『コーラス』で育児エッセイ漫画『ママはテンパリスト』の連載を開始。この作品は100万部を売り上げる大ヒットとなり、若い女性を中心に多くの支持を集めました。
『ママはテンパリスト』誕生秘話 息子さんが登場する『ママはテンパリスト』について、東村さんはこう振り返っています。
- 「28歳で妊娠、29歳で出産。出産後はほぼ別居で、すぐに離婚しました」
- 「出産直後に初めての週刊誌連載が始まって、おんぶしながらマンガを描いていました。待機児童も経験しましたし、保育園に入るために引っ越しもしました」
子育てと仕事の両立は本当に大変だったようですね。そのリアルな奮闘ぶりが、多くの読者の共感を呼んだのです。
ヒット作連発と数々の受賞:快進撃は止まらない!
東村さんの勢いは止まりません。数々のヒット作を生み出し、多くの賞を受賞しています。
- 『海月姫』 (2008年~)
- 第34回講談社漫画賞少女部門 受賞
- 2010年:テレビアニメ化 (フジテレビ『ノイタミナ』枠)
- 2015年:実写映画化
- 2018年:テレビドラマ化 (フジテレビ「月9」枠)
- 『主に泣いてます』
- 2012年:テレビドラマ化 (フジテレビ系)
- 『かくかくしかじか』
- 2015年:第8回マンガ大賞 受賞
- 2015年:第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞 受賞
- 『東京タラレバ娘』
- 2015年:第6回ananマンガ大賞 大賞 受賞
- 2017年:テレビドラマ化 (日本テレビ系) ← 大きな話題に!
- 『偽装不倫』 (2018年~)
- 東村さん初の縦スクロールマンガ(ウェブトゥーン)
- 2019年:テレビドラマ化 (日本テレビ系)
2013年には京都精華大学マンガ学部客員教授に就任するなど、その活躍の場を広げていきます。
このように次々とヒット作を生み出し、アニメ化・ドラマ化される作品も多い東村さん。まさに現代を代表する漫画家の一人と言えるでしょう。
プライベートと現在の活動:母として、漫画家として
東村さんは30代のころに2度の離婚を経験し、シングルマザーとして息子さんを育ててきました。
「最初の結婚は育児と仕事の両立が大変すぎて、ギスギスしてうまくいかなくなってしまいました」
「なんで手伝ってくれないのよ!」といつも思っていたそうです。
2回目の離婚も似たような理由だったとか。よく言う「すれ違い」ですね。
しかし、結婚そのものには全く否定的ではないそうです。
「結婚=家庭というコミュニティができることだと考えています。夫側の親戚も増えて、自分のベースが広がっていく」
と語っています。
現在18歳になった息子さんについては、
「今や全然手がかからない良い子。今どきの男の子って、『親と一緒にいるなんて恥ずかしい』感覚があまりないようで、旅行にも付き合ってくれます」
と嬉しそうに話しています。
「自分にとっての”最推し”ともいえる息子が、今はなんでも話せる親友兼推しとして、私の行きたいところに着いてきてくれるんです。推しと旅行できるなんて最高じゃないですか?」
息子さんはK-POP好きで、「将来は韓ドラの制作スタッフになりたい」と言っているそうです。高校卒業後は韓国で進学する予定とのこと。
「息子の成長はうれしいけれど、子離れのことを考えると今から涙が出そう……というか、すでに毎晩泣いています」
と母親の複雑な心境を吐露しています。仕事でのパワフルな姿とはまた違う、一人の母親としての素顔が垣間見えますね。
まとめ:東村アキコが描き続ける魅力的な世界
宮崎県出身の少女が、美大を経て漫画家になり、数々のヒット作を生み出すまでの道のり。東村アキコさんの半生は、まさに彼女自身が描く漫画のように波乱万丈で魅力的です。
仕事と育児の両立に苦しみながらも、独自の視点と才能で多くの読者を魅了し続ける東村さん。彼女の作品が多くの人に愛され、映像化されるのも納得ですね。
これからも東村アキコさんがどんな作品を生み出していくのか、そしてどんな人生を歩んでいくのか。彼女の新たな一歩に、私たちは今後も注目し続けることでしょう。
あなたはどの東村アキコ作品が一番好きですか? まだ読んだことがない方は、ぜひこの機会に彼女の魅力的な作品世界に触れてみてくださいね!